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2025年06月05日

日本消化器内視鏡学会誌 2025年5月号に掲載されました。

★ 論文の紹介 ★
 上部消化管内視鏡検診は,胃がんの早期発見を目的とし,その死亡率を低下させることを主な目的としています.近年では,上部消化管内視鏡検査を行うに伴い,胃がん以外にも,食道がん,十二指腸がんなどの他の上部消化管の悪性腫瘍が発見されることが明らかになってきました.現在では,上部消化管内視鏡検診は,胃がん検診から上部消化管癌検診という枠組みに見直されつつあります.

 今回,当健診施設において,2018年度から2022年度の5年間で,上部消化管内視鏡検診を受検した13,138例の受検者を対象とし,上部消化管腫瘍の1つである表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(superficial non-ampullary duodenal epithelial tumors: SNADETs)注の発見率に関する臨床研究を行いました.一般人の中でのSNADETsの有病率は,従来,0.03〜0.04%と指摘されておりましたが,今回の検討では,その発見率は0.21%とはるかに多く,従来以上にSNADETsの有病率が高い可能性が示唆されました.また,副次的な解析の中では,内視鏡観察でも評価を見落としがちな十二指腸下行部から水平部において,一定数のSNADETsが潜在していることが明らかになりました.

近年の食生活の欧米化などで,従来に比べて,上部消化管の粘膜環境が徐々に変化している可能性が指摘されております.SNADETsもそうした変化に伴い,発生数が多くなっている上部消化管腫瘍の1つと考えられています.皆さんも,将来の自分の健康を見据えて,積極的に上部消化管内視鏡検診を受検してみては如何でしょうか?

注: 表在性非乳頭十二指腸上皮性腫瘍とは
 ・・・ 十二指腸腺腫や早期十二指腸癌と従来呼称されていた腫瘍を総括した呼称.

論文: 『EGD検診受診者における表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の発見率の検討』
著者: 下出哲弘,松江泰弘,王紅兵,鷹取元,増山喜一
掲載誌: 日本消化器内視鏡学会誌. 2025年5月号 Vol.67(5). 1060-1068.

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